ラストもそれなりに衝撃(オレは最終話の冒頭で解っちゃったですけど)

 『FLAG』最終(第13)話迄鑑賞。「所詮高橋信者の言うこと」と一笑に付されてしまうかも知れないが、高橋良輔という監督はやはり奇才なのだ。本作はテレビではなくネット配信なので、期間でいうと全然違ってくるが話数的には所謂1クール分であり、一般的な30分アニメ(2クール全26話)の半分の話数しかないのである。こんなんで登場人物同士の濃密な関係性とか表現し切れるのかよ、って話数。

 『世界ウルルン滞在記』って数える程しか観たコトないんだけど(しかも下條アトムさんのナレーション目当てで)、アレってたかだか数日一緒に暮らしただけなのに別れる時泣くじゃん。視聴者(傍観者)としたら入っていけない領域なワケですよ、特に心が荒んだボクなんかは。「泣く程に交流なんてしてねぇって」とか「視聴者へのアピール?ハァ計算?」とか思って観ちゃう。

 でもさ、案外それって全部が全部そういう(胡散臭い)涙じゃなかったりしてンのかな?・・・っていう素朴な疑問に真正面から答えてくれたのが『FLAG』なんですよ。なんつーか、そういう別れの涙ってのは、他人の客観視じゃ解らない部分が確かにある一方で、人と人との繋がりの濃密さというのは時間だけが主成分ではないってコトをあくまでもリアルに表現しきった快作だと思う。

 「超ハイクオリティー・戦場リアルアニメーション」なんて銘打たれちゃってるんだけど、コレって映像のことを指してると思ってる人が殆どだと思うんですよ。これ凄ぇ大誤解なんだな。確かに映像ハンパねぇです、マジで。でもオレ的にリアルを感じたのはやっぱ主人公の戦場カメラマン白州冴子と、彼女が帯同し全行動を記録することになった国連軍の特殊チームSDCシーダック(Special Development Command)の面々との触れ合い度合いというか絶妙な距離感に尽きる。これこそが最もリアル。

 最近の人間ドラマ的側面もあり系のアニメに馴れてると腰抜かすって。
「もっとなんか隊員たちとの心の交流エピソードとか入れないと!」
って思っちゃっても仕方ないってぐらい、案外アッサリしてんですよ、これがまた。ただね、もう一寸よ〜く咀嚼してみるとですね、実はアッサリじゃなくてこれこそがリアルってコトなんだと。ドラマやアニメじゃないんだから(いやアニメだけどw)そうそう短期間で他人の心の奥底まで入ってはいけないんだなと。

 なのに描写不足の凡作にならないで(鑑賞者として注意深く観れる能力があれば、決して描写不足でないことは解ると思いますが)、寧ろその距離感を活かす方向でリアルな作品として仕上っちゃってるところが高橋監督の凄さ。んで、影の主人公、というかもう一人の主役というか、白州とは全く別の角度から関わっていく先輩カメラマン赤城圭一の存在は非常に大きい故、声優には石塚運昇氏を起用したんだと思った。これは完璧にハマっている。

 さて一方で、白州役については、なんとも微妙。以前、演技は出来ても声優としては未熟な人がいいということで女優の田中麗奈嬢を起用したと高橋監督が(配信特番で)言ってたのを観たが、ま〜コレについては正直評判よくないだろうね。逆にいうと、(実写で観ると程よくいい演技してると思える)あの田中麗奈嬢をもってしても、アテレコでの演技はまた別物でありそれなりのスキルを要するという証明であると言えよう。高橋良輔監督作品でいうと『装甲騎兵ボトムズ』のキリコとか『ガサラキ』の豪和ユウシロウ並に主人公の科白は案外少な目なのでそこまで気にもなりませんが。