夏目漱石に怒られろ

 テレビつけたら
「ヘイ!カール!」
って世界陸上かと思ったらカールじゃなくてカーだった。むぅ。関係ないけど、レイアウト変えてみました。


 少しだけ時間を巻き戻して金曜日。久々にMステ観た。たまたまオープニング視たらBONNIE PINKが出てたから。

 大学生の頃、『音楽誌が書かないJポップ批評』なんて雑誌を読んでいた時期があったのだが、あるとき烏なんとかってライターの人が、彼女の英語力についてやれ文法が稚拙だのナンだのって批評じゃなくて批判(というかもう難癖)めいた文章を載せていたことがあった。おぃおぃ、歌謡曲だぜ。英語の教科書じゃないんだから。

 その烏なんとかって人は世間的にはかなり有能なライターということになってるらしいんだけど、(他は知らないが)ただただ読んでいて胸糞の惡くなる文章だった記憶だけはしっかり残っている。

 烏なんとかって人は京大出だそうだが、高校の英語教師Yの授業を思い出した。Yも京大卒だった。授業中突然
松任谷由美はバカです」
とかほざいては彼女の英語の発音が間違ってることを得意げに指摘していた。

 今にして思えば、少しセンセーショナルな切り口でもって授業を進めたかっただけかも知れないのだが、当時のボクにはそんなエリート新米教師の“よかれと思って”(かどうかは不明だが)を察してやれる程にオトナではなかったので
「歌謡曲なんだから片仮名英語の方が音楽的にしっくりくるだけでしょ。大人気ないですね。逆に英語が出来たって出来ない人よりいい暮らしすらできないのを実証してどうすんの」
 って言って凹ませてしまった。後半部分は(英語と京大卒をとったら何も残らなさそうだったので)自粛してやったが。こういうヤツのせいでオレにとっての京大のイメージ惡い。どんとさんとかKYONさんに謝って欲しいものだ。

 話が反れた。が、オレはそういう空気読まずに優等生チックな理屈捏ねるヤツが嫌いだということが解って戴ければ蛇足だったと思わなくて済むのでそう理解して下さい。兎に角、歌詞ってのは学術的な束縛から解放されることによって新たな意味を持てたりすると思うのですよ。

 だいたい、英語詞だからちょっとばかり英語出来るヤツが得意げに文法とか発音なんて重箱の隅を突付くような難癖つけるワケじゃん。文法無視の日本語詞の曲とかだと明らかにどっちが無粋かバレちまうからできねぇクセによ。

 で、そんな烏なんとかって人の文章が載った次の号に、BONNIE PINKは真っ向から反論文を寄稿してきたのですよ。スルーしたって全然いいのに。あまつさえ、アーティストとして得になるのかどうかすら判らない状況で、凄い勇気というか信念持ってるなぁと思った。

 勿論、食って掛かるような喧嘩腰ではなく、飽く迄淡々と冷静に自分の表現について綴られた文章だったから尚更好感が持てた。どっちが無粋で大人気ないのかが如実に出たと思う。

 あれからもう6年くらい経つ。彼女はトレードマークだった赤毛をやめ、すっかり大人の女性へと脱皮し、楽曲も益々洗練された感がある。しかし、その中にはあの頃の英語詞への拘りみたいなものが未だ脈々と流れているような気がして目が離せない。

 余談。調べたら、烏なんとかって人は烏賀陽弘道という人で間違いないと思う。まぁこの人も朝日新聞社時代に色々あって捻くれてしまったんだろうか。高校時代の別の新任英語教師だったH先生が言っていた言葉を思い出した。
「あたしが学生時代、尾崎(豊)は大人たちに反抗する姿がかっこいいと思ってたんだけど、いつの間にか彼も歳をとってしまって、最後は尾崎自身が説教くさい大人になってしまったのよね。。。」
 権威が人を変えるのか、年齢が限界を見せるのか。俺もそうなってしまうのか。まぁ、権威には縁が無さそうだけど。出来る限り、大人にはなりたくない。できることなら、せめてオヤジは飛び越えてジジイになりたいものだ。偏屈なジイイに、な。