ああ空洞なり そは空洞なり なり

幾原邦彦氏

 そういや新社員寮に越してから、まだ郵便物をチェックしていない。郵便受はダイヤルロック式。部屋の中に番号を書いた紙がある筈だと訊いたのだが、まだ見つけていない。まぁ、大量の靴を整理しようかと靴箱開けたらエアコンのリモコンが出てきたようなトコなんで、ドコに隠して(?)あってもおかしくはないワケで。

 とはいえ、郵便物は溜まる一方。仕方ないので今日は力ずくで、とばかりに無理矢理手を突っ込んで郵便物やチラシ類を引っ張り出したらば、その中にダイヤルロックの解除番号が書かれた紙がありました。愉快なコトしてくれるじゃねぇのさ。


 今日も自主早朝出社だったので結構疲れた。帰宅中のiPod、今週はアニメ特集ということで元気が出る曲が多いだろうと思ったら、甘かった。不意を突いて聴こえてきたのは『少女革命 ウテナ』のサントラから連続2曲攻め。『体内時計都市オルロイ』から「ゲルツェンの首」と『絶対進化革命前夜』から「スピラ・ミラビリス劇場」はヘヴィすぎ。

 こういうのって、テンションの上がる曲ではなくてテンションの上がった時に聴くべき曲だと判った。毒気に中てられる、じゃないが正直具合惡くなりかけた。光宗信吉氏の純粋なインストは一筋縄ではいかない部分もあれど癒し曲も多いのだが、ここで言っているのは勿論J.A.シーザー氏の曲の方。

 麻薬なんて生温いモンじゃない。劇薬・猛毒である。しかし旨い。だから、毒に打ち勝つだけの体力無き状態では絶対に聴いてはならないのだ。

 つーコトで、帰宅してシャワー浴びてゴハンも食べて、万全の状態にてウテナ特集に挑む。うぉお、やっぱ凄ぇなこりゃ。ちょいヘヴィめのハードロック系サウンドに、難解にして奇天烈且つ荘厳で繊細にて惡趣味な歌詞を乗せ、東京混声合唱団や杉並児童合唱団や極めつけの演劇実験室“万有引力”といった日本屈指のプロフェッショナル集団が歌いあげる楽曲の数々は、正に極上の惡夢といった感じ。

 作品そのものの作風もそうだが、劇中の楽曲からも只ならぬヤヴァさを感じたアニメは、後にも先にもコレっきりになるんじゃないだろうか。なんつーか、当時大学生のボクにとっては、昔の角川映画的トラウマの再来だった。日常に潜む非日常(狂気)を、J.A.シーザー氏の楽曲も含めた前衛演劇的演出の連続性によって見事に表現していたと思う。

 個人的には『ガサラキ』と並ぶ、“エヴァ以降”でありながらその呪縛とは無縁の境地に達した快作だと考えている。特に、(劇場版も作られたがその前に)TVシリーズでしっかり完結させていたところを評価したい。

 ややもすると某作品(バレバレですがな)のように、爆発的ヒットになりながらも最期は監督のマスターベーションで収束してしまうような、大いなる腰砕けにならなかったのは、監督を務めた天才・幾原邦彦氏の絶妙なヴァランス感覚に尽きると思う。

 某誌にて盟友、天才・永野護先生と2人でセーラームーンのコスプレを披露していた(幾原監督にとってセーラームーンシリーズディレクターを努めたことで事実上の出世作。永野先生とは『シェルブリッド』繋がりか?)あたりの御茶目さも、逆に侮れない。

スタまにシリーズ:少女革命ウテナ

スタまにシリーズ:少女革命ウテナ