あなたのゲームが好きでした

横井軍平

 電車に乗っていると、ゲーム野郎と遭遇することがある。けっ、ゲームしか能のないマシン風情が生意気な!なんて冷ややかな視線を送るワケだが、心の奥底では無意味な対抗意識が発生していたりする。

 ポータブルゲーム機にVAIO type Uで張り合おうというのがそもそもナンセンスなことは充分承知している。そりゃ、キーボードこそついてないからPDAの上位機種くらいにしか見えないかも知れないが、れっきとしたWindowsマシンだし、しかもXP pro。画面もデカいし、なんだってできる。

 ただ、ゲームという一点だけを比較した場合、そこだけに特化したゲーム機にはやはり敵わない。ゲーム野郎の隣に座り、画面を縦モードにしてマンガを読んでいると、彼は彼でこちらが気になるようでチラ視してるとはいえ。

 キリのいいところまで読んで、さてあと10分くらいで降車かな。という僅か10分の使い道に困ってしまった時点で自らが敗北を認めていることに気づく。こうした、一寸した時間はゲームでもしてる方がスマートだからだ。

 別に、VAIO type Uでも最新ゲーム機と互角の勝負ができないワケじゃない。PCなんだからPC用のゲームをインスコしてれば普通に動くし、ディスクが必要ならば仮想化してマウントさせておけば光学ドライブの有無も問題にはならない。

 ただ、問題は操作系インターフェース。VAIO type U単体ではパッドのような操作は不可能。一時期は意地になってゲーム野郎と闘うべくUSBパッドも携帯していたが、電車の窓に映った己が姿の滑稽さに愕然としてやめてしまった。ん〜、やっぱスマートじゃないんだよね。

 そんな折、気晴らしに面白フラッシュでもないかしらとネットをプラプラしていて気がついた。フラッシュのゲームがあったじゃないか、と。フラッシュというと(私の勝手な思い込みだろうが)どうしても動画と考えてしまうが、ゲームだってあるんだよね。しかも、こんな容量でこんなモノまでできちゃうの!って感じだし。

 ま、よくよく思い出したらファミコンのソフトだってMB(メガバイト)の領域に突入したのはコナミの『がんばれゴエモンからくり道中』以降だモンね。パッケージに“1MBの大容量!”ってシール貼るくらい凄いことだったワケですから。いやこれマジで。タイトーの『不動明王伝レイ』なんて「に、2MBだぜ!」って当時仲間内で盛り上がってたくらい(笑)

 フラッシュのゲームは、こんなのが本当にフリーでいいのかしらと驚嘆する程に本格的なものから、かなりシンプルながらゲームの本質をしっかり押さえたモノもかなり多い。美麗な映像を差っ引いたら陳腐な内容の最新ゲームよりは全然楽しめる。

 1MBにも満たないプログラムも、クリエイティヴィティ次第では無限の面白さを秘めた名作に成り得る。本来、ゲームとはそういうモノだ。日本のテレビゲームの父ともいうべき元任天堂の故:横井軍平氏の“枯れた技術の水平思考”という名言を思い出す。

 んで、有り難い事に、そうした秀作フラッシュゲームには、マウスとクリックボタンだけで堪能できるものも多い。これならVAIO type U単体で遊べる。今日も、マンガを読むのを忘れてしまう程に、アタマの中で「あと1回やったらやめる」を反芻してるウチに最寄り駅に着いてしまったボクがいた。