電車男≠男電車

電車男

駒苫
こまとま、って言い難い。苫篠の奥さんは渡辺典子、関係無ぇか。

電車男
 友人につき合わされ、劇場版『電車男』を観てきた。ナンか急に気になったんだけどドラマも途中から観るのヤだし、今更一人で映画館行くのが恥ずかしいから、とのこと。いい迷惑だよ、と言ってはみたが、まぁここ数日のブログの内容とも多少リンクしそうだし、そう言われたら心なしか興味が湧いてきたのでここは担がれてみた次第。ってか、まだ公開してたんだなぁ。

 思っていたような内容とは少し違った。思考錯誤しながら垢抜けていく様がコミカルに描かれているのかと思っていたので。外見は一瞬で様変わりしてしまった。まぉう。

 電車男が幸福なのはヲタ的視点からではなく、下心に近い部分が原動力になって外見改造ができたこと。この場合は素直さがいい方向に働いたんだと思う。これを書いてる男にはそういう動機がなかったので、この服の生地はとかディティールはとかって結局新ジャンル開拓にしかなってないワケで。モテなかろうが着たい服着れればいいやぃ。ま、そういうコト言ってるからダメだと言われますが。

 ただ、己を変えようとする素晴らしさと己を偽ることの醜さの違いが裏テーマになってて面白いと思った。

 そういえば一人、思い出した人物がいる。大学時代に親交のあったYくんだ。当時私とEくんは常々、なんでYくんはダメダメなんだろうという会議をしていた。
身長:178センチ
体型:スリム
顔:寧ろイイ方
学歴:慶応(卒業できたかは不明)
これだけ、一般的なイメージでいったら決してモテない訳じゃない最低条件が揃っているというのに。

 彼をモテ界、というか世間から隔離している理由は、やはり彼自身の内面にあった。少なくともヲタ趣味があるのはさほど問題視してなかったが(それでも「俺はオタクじゃない。何故ならオタクというのは・・・」とオタクの定義を長々と力説する人だったが)、兎に角のめり込み過ぎるのが大問題。

 体内電池が切れるまでゲームやったりアニメを観ては、そのまま力尽きて寝てしまう毎日の繰り返し。いやマジ繰り返し。我々が把握していた期間中だけで、約一ヵ月以上も風呂に入っていないことがザラだった。たまたま上京してきた御両親と会った際、第一声で「臭いから取り敢えず風呂入って来い」と言われたこともあったらしい。風呂嫌い、ではないのだ彼は。単にすべきことの優先順位が他人と違うのと、上記の理由で本来風呂に入る分の気力まで使い果たしてしまうダケなんである。

 せめて最低限の清潔さは保ちなさいよと説教するのだが逆ギレされる。これが引篭りだったらまだよかったのだが、ヘンなところで活動的なので尚更困る。ある時、たまたま駅でEくんと一緒になった帰り道、踏み切り待ちしてたらEくんが
「おい、(踏み切りの)向こうになんかヤヴァいヤツいるぞ」
 もう肌寒い10月だというのにヨレヨレ且つ有り得ない柄のシャツに短パン、足元は居酒屋のトイレ系サンダル。その男の周囲だけ人がいない。間違いなく○○○○だと思った。

 が、よくよく視たらYくんだった。服装に反して髪だけはピッチリしていたが、それはポマード塗ってるんじゃなくて永らく風呂に入ってないから。愕くほど長期間頭を洗わないと油でコーティングされるというのは彼と出会って得た知識(?)だ。他人のフリをしようとしたら見つかった。
「おぉ」
「出かけるの?」
「ちょっとね」
「あ、そう。じゃね」
 逃げるように会話を切り捨て、その場を後に。さっきまで話していたマジメな話など忘れてEくんが言う
「“ちょっと”って、あれコンビニじゃなくて新宿行くんだぜ」
「嘘だろ。あの格好で電車までは乗れないでしょ」
「だってTSUTAYAの袋持ってたぞ。ビデオ返しにいくんだって、絶対」
「・・・ありえん。でもYくんなら・・・」

 電車男も、元は決して悪くない(劇場版の話)が、Yくんのようだったらあんな話にはならなかっただろう。間違いなく彼自身が電車内で警戒されるだろうから。熊田薫もブタゴリラだから怒らないが、ゴリラブタって言われたら怒ると思う(多分)、そんな意味を込めてYくんを“男電車”と呼ぶことにした。Eくん、また帰省して呑む時は男電車の伝説の数々を肴にしような。人間は学歴じゃないなということを痛感させてくれたYくんに、乾杯。