BGM:モテたくて・・・ / ギ・おならすいこみ隊

ドリルキング・アンソロジー

 午後、財布の中の福沢さんが2人になっていたので金を下ろしに。使う、使わないは別として福沢さんが4人位居ないと落ち着かない性分なのです。というもの社会人1年目の年末、某百貨店の忘年会でベロベロになった他社のおじさん(某ネクタイメーカー課長)の介抱をしてたら終電にも乗れず、金もなかったのでそのおっさんと2人でホテルに泊まるハメになったというトラウマがあるのです。いやもう凄かったですよ大阪弁でずーっと翌日の仕事の予定を寝言でいってんだもん。殆ど寝られなかった。

 ついでに。ボクの財布哲学として、“最小限”という鉄則があります。余分な紙幣や硬貨は持ちたくないのです。つまり、
五千円札:0 or 1枚
千円札:0〜4枚
五百円玉:0 or 1枚
百円玉:0〜4枚
五十円玉:0 or 1枚
十円玉:0〜4枚
五円玉:0 or 1枚
一円玉:0〜4枚
 コンビニとかスーパーのレジで小銭をドヴァーっと出すヴァヴァアとか視るとイライラするんです、私。因みに、福沢さんは三人未満だと不安。でも、七人超えるともっと不安(笑)


〜十年目の真実〜
 昨日、歌舞伎を観終えた俺とcausaは銀座と有楽町の中間あたりの店で呑んでいた。今日こそは彼女から訊き出したいコトがある。今から10年程遡った、大学2年あたりのことだ。causa曰く、知り合いの女の子でS井くんのことを好きな娘がいる、と。野暮なことにはあまり介入しない性分(ってか当時、自分じゃ気づかなかったが微妙にATフィールドを展開していたのだと廻りは言う)なのでS井くんがなんとなく紹介して貰ってるっぽいことには気づいていたが、俺は敢えて詮索しないよう努めていた。

 それでもある時、フと「モテるって、いいなぁ」と呟いてしまった俺にcausaが言う。
「アンタのこと好きだって娘もいるのよ、誰かは言わないけど」
「なんだよ、俺には教えられないってのかよ」
「まぁ・・・そうね」
何故かそれ以上訊けなかった、当時の俺。

「・・・なぁ、そろそろ真実を語ってはくれまいか?」
 ジントニックをストローで吸い上げるというマヌケな飲み方(個人的には可愛さ演出)をしながら切り出してみる。
「あ、まだ気になってたの?」
「そりゃそうでしょ、そういうのとは無縁の人生歩んできてんだよ、俺は」
「アンタのためを思えばこそ言わなかったんだけど・・・」
「誰?」
「・・・Hさん」
目の前が真っ白になるというのは本当だと初めて知った、30歳の夏の終わり。

 Hさんと言えば当時、俺が仲間内でことごとくネタにしていた“ザ・おばさん顔”の女性である。当初は聴講生のおばさんだとマジで思ってたくらい。当時の俺語録だと
「Hさんは、物凄く心が清らかかも知れないよ。だとしても、だとしても絶対ヤだ。あんな逆ヴィジュアル系(爆)」
匿名で書いてるとはいえ、今思えば非礼極まりない発言である。しかし、腋毛のイタリア代表もとい、若気の至り若干20歳のボクの偽らざる気持ちはそんなモンだったワケで。

「・・・マジで?」
「今更ウソ言っても仕方ないでしょ。だから言わないでいてあげたのに」

 仮に、全く覚えてないような娘の名前が出たとして、確かにテンションは微妙に上がらなかったろう。だからって激下がりするとも思っていなかった次第。楽しかった(っぽい)大学時代の淡い(ような)思い出は、轟音を響かせて崩壊していった。

 だいたい当時、小さなお友だちの間ですら完璧に流行りきっていなかったミニ四駆(塗装もしてさ)を構内で走らせてたようなヴァカですよ。吹き抜けになってる3階から1階の屋根の上に落としちゃったうえに、学生課行って「取って下さい」とは言えなかったトゥ・シャイシャイ・暴威ですよ。英語の講義で教授が当てる順番を察知して、比較的簡単なセンテンスが俺のところに廻ってくるようcausaを坐らせて順番を調節していた卑怯者ですよ。オトナになったらそれを要領がいいという詭弁で誤魔化してきたんですよ、俺は。

 十年目の真実は、そんな俺への。。。