業務内容は落札

NARUTO

 朝礼が終わって暫くすると、同期のK嬢がやってきた。
「忙しいとこゴメンね。コレがどうしても欲しいんだけど、なんとか出来ないかな?今すぐ!」
手に持った紙には、”ヒカルの碁”の扇子と”NARUTO”のガシャポンフィギュアがプリントアウトされている。
「???」
いくら不思議ちゃんのK嬢とはいえ、今が就業時間の真っ最中だってコトくらいは知っている筈。おや、紙には何やらフランス語の走り書きが。
「惡ぃ、ちょっと説明してくんない?」

 現在、我が社と契約中のPというデザイナーが、主にアプルーバル関係の打ち合わせでフランスから来日中だ。K嬢は仏語が堪能ということで、そういう期間は本来彼女の担当外ブランドなのだが、特別にそのデザイナー先生の通訳をやっているらしい。件の紙はその先生が海を越えて持ち込んだモノだそうだ。

 なんでもフランスでは今、”ヒカルの碁”と”NARUTO”が超人気なんだそうで、本国の先生のスタッフの中に熱心なファンがいて、日本に行ったらどうしても買ってきて欲しいとせがまれてきたんだそうだ。んだよ、俺にフランスのアニヲタの世話しろってのか(笑)

 とはいえ、我々の業界は我儘な先生のご機嫌とるのも仕事の内。つーコトで、業務ってんなら、やってやろうじゃない。昼休みはまだ2時間も先だというのに堂々とヤフオク(流石に中野のまんだらけまで買出しに行く訳にはいかないので。落札して後日フランスに送りつけてやるというコトで先生に納得して貰いました)。微妙にヘンな感じだなぁ。

 商品の正式名称は分からなかったが、作品名がハッキリしているので1分程度で検索。価格的に妥当な出品者を選定し、評価内容を吟味したら隣の部署からIDを取得しているヤフオク主任を呼ぶ。

「N井さ〜ん、すいません、落札かけてくださいよ〜」

 素っ飛んで来ました。まだ仕事中じゃないか!って意外に真面目なんだな、このヒト(笑)。事情を説明し、落札。2つとも開始価格が希望落札価格だったのであっさり終了。


 働き甲斐のある職場です(笑)