いつも心に光学迷彩を

笑い男と呼ばれた青年

今日、移動中に聴いた音楽(いっぱい聴いた順)

青春狂騒曲/サンボマスター
オンナのコ・オトコのコ/小倉優子
未来がなくても抱きしめて/日給8000円

 やはり仏恥義理でサンボマスターがイイ感じ。ただ、正直世間での盛り上がり(評価?)は些か過剰に思えてならない。昔、オールナイトニッポンで瀧か卓球かどっちが言ってたかは忘れたが、カルピス理論だなと思った。

 サンボマスターは絶妙に美味いカルピスだ。他に情報を持ちえなくとも、これだけ呑んでりゃ確かに美味いと感じられるだろう。ただ、カルピスには原液があり、幾ら美味いものだとしても原液のまま呑んで、濃けりゃ濃い分だけ美味いと感じる人間はそうはいない。しかし、原液の味を知ることで、普段呑んでいるものが如何に絶妙なヴァランスで希釈されているかを感じ取れるのではないだろうか。比較基準は少なからず必要だ。今、世間で彼らに過剰反応してる連中は友川かずきという名の原液の味を知らないだけなのさ。

 日給8000円は時給800円に対抗(?)して結成された、加藤夏希村上知子のユニット。これがまた意外に切ない程歌謡曲してる。このテの歌謡曲に於いては「歌唱力の違いが、クオリティの決定的差ではないという事をおしえてやる!」とシャア(当時少佐)も言ったとか言ってないとか。それにしても、森三中内の歌唱キャラである黒沢宗子ではなく村上知子が先に歌手デヴューというのは皮肉なものだ。この事実に関して「悲しいけど、コレ芸能界なのよね」とスレッガー中尉も言ったとか言ってないとか。


 アニマックスでは”また”「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」。この前まで週末に2話ずつ放送してたじゃん。とか言いながら”また”観てるオレ。

 優れたフィクションとは、根幹の嘘臭さを圧倒的リアリティ(言うまでも無いがリアルである必要は全く無い。飽くまでもリアリティでいいのだ)が捻じ伏せているものだ。これについて、僕はよくパトレイバーを例に出していたのだが、最近になってどうも私が考えていることが歪曲して伝わっているらしいことが解ってきた。

 パトレイバーに於いては、根幹の嘘臭さはレイバー(人間が搭乗する多足歩行ロボット)の存在で、それを取り巻く世界観(バビロン・プロジェクト等)がリアリティでもって優秀なフィクションの高みに押し上げている。と、オレは言っていると思われていたらしい。いや、全然違うですよ。レイバーなんてそのうち実用化されちゃうだろうから現実の範疇ですよ。オレが嘘臭さの極北だと言っていたのは後藤隊長のコトなんだけどね。だって、いないじゃん。こんなカッチョイイおっさんは。

 話を戻す。以前にも書いたが、攻殻機動隊という作品は士郎正宗の原作と押井守の映画版と神山健治のS.A.C.シリーズをパラレルな位置関係として認識しておく方が悧巧だろう。アニメで語るならば、ゴスシェル、S.A.C.、イノセンスの順だろうか。ゴスシェルとS.A.C.の差は、キャラがアニメっぽくないかどうかというだけ。S.A.C.2はまだ観ていない。S.A.C.同様、まとめて一気に観ようと思っているので。

 さて、そんなS.A.C.のストーリーの核になっているのが興国の旅団笑い男事件だ。作中、笑い男と呼ばれる青年が起こしたセラノ・ゲノミクス社社長誘拐と電脳硬化症の特効薬である村井ワクチンの許認可問題が中盤から終局までグイグイ引っ張る訳だが、何度も観ていて流石に気がついた。

笑い男の犯行は矛盾だらけじゃないか、と。

 特Aクラスのハッカー故、眼を盗むことすら朝飯前なんだから、なんでわざわざ顔を隠して犯行に及んだのだろう。笑い男のマークで顔を隠すことで、より匿名性が濃くなり、その分犯行の思想的純度が下がってしまうだけじゃないか。犯行時だけ顔を隠し、普段普通に生活できるならその逆で良かった筈だ。でもこれじゃ物語としては面白くなんないんだよね。

 やはり、青臭い正義感が行動原理の単純な思考の青年に、どういう訳か特A級のハッキング能力が備わってしまったという、あるイミ「超能力学園Z」並のギャグ臭さを、現実的未来思考に基づいた世界観と緻密に練られた脚本が覆い隠した結果としての魅力的なサイバーテロだと思う。サリンジャーの引用と青年の改竄染みた追記の青臭さだけはやはり戴けないが。。。耳と目を閉じたところで肛門がパクっと開いてるような滑稽さを感じるね。