君が為 尽くす心は 水の泡 消えにし後は 澄み渡る空

「IZO」-以蔵-

 疲れが溜まっていたせいか、夕刻迄寝る始末。久々に何もしない休日となった。


〜「IZO」-以蔵- 〜
 観に行ったのは19日(銀座というか都内での上映は22日までだったので)。しかし、珍しく感想文を書くのに筆が進まなかったのだ(平日は時間ないってのが最大の理由なんだが)。普段、どんなにつまらない映画を観ても、それなりにスラスラと感想文くらいは書けるものなのだが。。。

 三池崇史という監督には落胆させられっぱなし。私もそんなに阿呆ではないので、予告を観ればそれなりに面白そうかどうかぐらいは判る。それなりっぽい作品を観る場合は、つまらなさの最低ラインを予め想定し、いい意味でどこまで裏切ってくれるかという見方をするので(ヤな客だなw)落胆させられるようなことはまずないのだ。

 にも拘らず三池監督には落胆させられている(前回は「殺し屋1」だったかな)。理由は、実は至極単純。キャスティングや予告等、所謂”お膳立て”がやたらと期待させるレヴェルに仕上がっているからだ。ちょいとググればオフィシャルサイトに辿り着くだろうから、是非みて欲しい。できれば予告も。絶対”面白そう”だから。

 幕末四大人斬りの一人、岡田以蔵の怨念に満ちた魂が時空を超え、新宿のホームレスに宿る。途端、彼の体躯は豹変し、非情の殺人マシーン”IZO”が誕生。しかしその存在は様々な世界や時間を繋ぐ、謂わば”位相”というシステムの中のバグ。時空を統括する位相の貴族院の面々(ビートたけし曽根晴美岡田眞澄片岡鶴太郎篠田三郎)は、同心、警視庁特殊急襲部隊SAT、伝説の剣豪(多分宮本武蔵っぽい)、ヤクザ、博徒、ヤンキー、サラリーマン、PTA軍団、果ては鬼等、権力・思想・社会・風俗の様々な刺客を送り込んでIZOを消そうとする・・・ね、面白そうな感じだけはするでしょ。それがまぁなんだ、これだけ贅沢な俳優陣でよくもまぁこんなモン作ってくれたなって感じになっちゃってるんだから落胆必至。

 最近は「るろうに剣心」とか読んでることもあって、個人的に興味があるのは人斬りの心情。理想やイデオロギーを実現するために障壁を排除する、手段としての人斬りテロリストであっても、人を殺めるのが目的の快楽殺人者ではなかった筈(本日のタイトルは岡田以蔵の辞世の句。よく咀嚼すること)。そんな彼を、ただ刀を振るうだけの存在にし、森羅万象(全てが擬人化されたもの)を斬らせることで逆説的見地から現代社会を斬るようなものかと思いきや・・・という訳。俺が考え過ぎなのか?

 因みに、位相を司る貴族院や彼らを操る殿下(松田龍平)は位相の絶対者ということだが、存在定義としては「≠神(<神)」程度と考えてよいだろう。寧ろ友川かずき役(おいおいw)の友川かずきの方が存在として神っぽいポジションに居るが、本編に干渉してこないところをみると、神の部類であってもFSSのジョーカーとかサタンみたいなモンか。そういや、サタンは生命を見る魔人Life Watching Overlordでもあったっけ。

 全編を通してIZO役の中山一也のできそこないのヨーデルみたいな雄叫びが流れる中、友川かずきがギターを掻き鳴らして謳うシーンだけは”本物”の持つオーラというかなんというか、迫力に溢れていて思わず気圧される。