昔は“!”がついていた

 もし今、俺が中学二年生だったら(来月32歳になろうとしてるオッサンが何言ってんだか)絶対ハマってると思う、陰陽座。大人になると普通に聴き流してしまうのがいけないところだ。音楽的には普通にソツのない演奏力とかクセのない女性ヴォーカル(オネーチャンなのかお姉さんなのかおばちゃんなのか判然としない、という部分も“俺が思う良い女性ヴォーカルの条件”に適合していると思う)、そしてコンセプトは意外と考えつかないところを狙っているので「やるな」と素直に感心する。

 が、どうにも平安調の衣装の印象が強いので“義経”だとか“○○忍法帖”といわれると違和感を覚えてしまうってのは否めないかな。しかし一方で重金属とか鳳翼天翔とかおじさん世代がニヤリとするネタを忘れないところはいいね。あと、個人的には全員長髪じゃない方が判り易くていいと思うんだけどね。なんつーか、或る種異形体が内包する異形って必要なんですよ。大川興業でいうところのジーコ内山氏(正座の人)とか、聖飢魔IIだとライデン湯沢殿下(悪魔ではないのです)とか、ね。

 そんな陰陽座と意外にも接点があるのが、犬神サーカス団。これも、よくよく考えたらなかなか面白いバンドである。ボクが最初に視たのは大学生の頃。鈴木慶一さんと元フェアチャイルドのヴォーカルの人が司会をやってた『ゑびす温泉』(テレ朝)の勝ち抜きバンド合戦的なコーナーだったと記憶している。最初こそ人生(電気GROOVEの前身バンド)時代の卓球氏のオバQメイクを思わず思い出してしまったりもしたが、曲自体は真っ当な感じだった気がした。

 その後すっかりこのバンドのことは忘れてしまっていたが、たまたまテレビつけたらやってた『うたばん』で視て一気に記憶が蘇ってきたものだ。バンドサウンドは一回り成長した感じで、犬神凶子嬢(?)に至っては体型的にも二回りぐらい成長していた。まぁ、ゑびす温泉から10年近く経ってるから仕方ないか。

 音楽的には、まぁ一言でいうと「残念な感じ」である。なんつーか、結局世間にはイロモノバンド程度の認知で終わってしまうんだろうな、と思えるから。正しく理解されないのがよくわかるだけに残念なのだ。故に(かどうかは解かんないケド)インディーズに戻ったというのは英断であると思う。

 音楽的な部分以外だと、あとは単純に何が面白いかって、素顔の隠し度合いである。『うたばん』のとある回やとあるPVでは所謂“素顔”で出てたりする。今からでも“ちゃんと”捜せば視れます、普通に。とはいえ、こういうのって軸がキッチリしてるからこそできる芸当なんだろうな。